2000年、20世紀の終わり
1.20
やがて死にゆく祖母と
すでにして悟りに入らんとする人と肩を並べて過ごす春の日
1.25
澄んだ祖母のからだには、祖母の時間が透けて見える。
2.7
つづく雪屋根は、美しいうそのようだ。
The endless rooves with snow are just like beautiful lies.
3.18
今日はも春なので
今日は窓をあけはなす
春になったよろこびが
窓からしずかに流れこむ
猫がそれをながめている
猫を私がながめている
4.18
アボカドの影がガラスにゆれている

Atsushi Kadowaki 2000
8.18
私たちは
夕焼けをむだにしている
列車の中では
誰もそれに気づかない
うつむいて
目をとじて
あらぬ方を向いて
8.19
あの稲が浴びているのと同じ陽をわたしもたっぷり浴びている
そこから何を読み取らねばならないのか、そんな自問に慣らされている。
8.23
はじめゆっくり用心しながら
見知らぬ道をゆくように
そして歩みは年とともに
慣れていつしかはやくなる
としをとると時がはやく
過ぎゆくわけはここにあるのだ
8.24
何かを捨ててゆくことの中にこそ幸せを見る
8.26
遠くの花火を見る思い
山ひとつこえた向こうに上がる花火。手の中におさまるくらいに見える花火は音もなく。
9.4
私は滝を見ている。
滝を見ている私がいる。
正確に自分であるところの自分を知ってもらおうと思わずに、故意に自分でないものを自分と誤解してもらおうとすること。
9.28
ねこどもは
じっと静かに何も語らず
こちらを見たり あちらを見たり
よりそったり はなれたり
ねころんだり とびはねたり
ねこどもは
じっと語らず しかし近しい
10.19
「買う」ということの中に含まれる暴力について。
10.21
チェース・チェンはなぜ西洋人ばかり描くのか。
パレスチナ=イスラエル。この同じ土地を表す語が、常に対立し合う両陣営として表現されるアイロニー。
12.4
真実はいつも黙っている。
12.26
いまや代替不能なものなどない。クリスマスも誕生日も命日も、その日付よりはその実にこそ多くの意味があるのであって、いかなることがあろうとその形式である日付にこそ意味を見出していた時代は終わったのだ。
先生:思えば、今日はクリスマスだな。
生徒:えー、ぼくんちクリスマスもう先週のうちにやっちゃったよ!