2000年の絵画帳 1

「忘れられたもの」 テンペラ、パネル F20号
個人蔵
この絵を描きはじめたのはたしか一昨年くらい前の冬のことだったと思う。この丘をこえたところが、「私はこの枯れた土地を一生の間描き続けてもいいと思った」を描いた場所であり、そこから見える山の中に、「丘をこえて」の牛舎がある。ここへは折にふれて通っていたのだが、ある時ふと行ってみると、絵の中にあるような不思議なものが打ち捨てられていた。草刈機の一部だと思うのだが、そのさび具合といい、かたむきかげんといい、実にすばらしく、現実にそこにあるものだとは思えないほどであった。時どき私はこうした光景に出くわすが、まるで誰かが私のために用意してくれたセットか何かのように思えるのだ。
その場の雰囲気を大切にしようと石膏を塗った20号のパネルを現地に持ち込んで下描きをした。その後ほとんど完成していたのだが、完成間際になって何かとても気に入らないような気がしてきて、ずっと、それこそ1年半くらいは放っておいた。こうなるともう捨てるしかないのだが、私にしては珍しく、その後も少しずつ色を塗って完成させることができた。
丘に生える草は一本一本、織り込むように筆で描いた。そうして私の手の下で一つの息づかいが生まれていく。