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1999年の絵画帳 1

拡大図  

「 丘をこえて 」  テンペラ、パネル 54.4×42.3  

 この年の初めまで、私のモチーフは主に枯れ野に集中していた、ということが言える。私は自分の気に入った丘をいくつか持っていて、日によってそのいずれかに出かけていってはそこを歩きまわり、絵にしていった。この絵はそうしたもののひとつの成果であると言える。
 すでに使われていない牛舎や納屋、打ち捨てられた風景を好んで探して描いた中でもこの場所は別格で、山あいにある狭い田を奥へ奥へとのぼっていった先の、本当に隠れた場所にあって、その荒れ果てた様子に、この私ですら長時間とどまることをためらったほどだった。そうした場所には特有の霊気のようなものがある。かなしげな目をした牛がそっとこちらを振り返るような、そんな湿った雰囲気がある。
 内から外を見るという構図で描かれたこの絵の、実際の風景にはすぐ目の前にせまる山があるのみである。私はこの隔絶されたような場所に、ひとつの救いをもたらしたかった。私はいつも暗いこの窓の内側にいて、外の広々とした空間をながめている。窓からは外の冷気が流れ込み、雲はゆっくりと流れていく。もしかしたら、当時私は牛か羊だったのかもしれない。何かにつながれ、じめじめとした中で、外の自由にあこがれながら、与えられた生を、いずれ断たれるさだめの中で生きている家畜たち。そうした生を受けとめ、それとともに前へと進んでいく。これはそうしたものたちを描いた絵でもあるのだ。

 

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