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デモ・テープ 9

Atsushi Kadowaki 1998

 

 January, 2001

 

1.New Year's Eve has passed  
2.The Dawn Tide  
3.虹の上の雲  
4.大漁旗 今回未収録
5.船が着くとき  
6.ソクラテスとの対話  
7.トリンギット族の魚打棒  
8.燕尾服を着た猫  
9.My Sweet Home  
10.昼下がり  
11.冷たい太陽  
12.1月の雨  
13.雲を浮べて  
14.Just A Month  

※楽曲は、アナログ録音したものの一部をリアル・オーディオ形式にエンコードしたものです。再生にはリアル・プレイヤーが必要です。

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 タイトルの通り、2001年の1月に録音したものを集めたものだ。4月中旬の今、こうしてこれを書いているのは、2月からずっと忙しかったためで、今日1日でこの14曲を1枚のMDに編集した。MDはずっと前からほしいと思っていたのだが、やっと先週手に入れた。これで録音作業の方にも何らかの技術革新がもたらされるかもしれない。
 しかしこの、生活のスタイルが一変してしまったこの数ヶ月に入る前の日々に録音されたこれらの曲を聴き返すと、忘れていたものに出会ったときのような感覚におそわれる。この、図らずも21世紀の最初の1か月間に私がやろうとしたことは、シンプルな編成による音楽作りだったことに思いあたる。最初の方こそピアノ(実際にはクラビノーバ)にエレピ、ベース、ドラム(・マシーン)といった編成だが、日を追ってトリオ、やがて後半はほとんどピアノソロというようになっている。(今回、曲順はほとんど録音順に並べてある。これはMDという、聴き手の積極的な編集作業を可能にした機器の普及によって、今では作り手側が曲順を提示する意味は急速に失われつつあるからである。こうした時代に提示できるのは、単なるデータであるという姿勢くらいのものではなかろうか。)
 やっと最近仕事に余裕が出てきて、またいくつか作ってみているのだが、それはこの1月に作ったものとは明らかに断絶している。逆に言えばそれが延長していたらどうなったのだろう、ということなのだが、いずれにせよこうしたことは振り子のようなもので、一方の端までいくとまた戻ってきて反対の端へといくものだ。現にその前に作ったテープはシーケンサーのプリセットパターンを多用したもので、ほとんどこれじゃあカラオケだと思っていた。だからその反動といえるのかもしれない。
 また、これらの曲を作っていたときのことを思い出すと、それがプラトンを熱心に読んでいたときと重なるということが言える。昨年の夏、浦戸諸島(宮城県塩竈市)へスケッチをしに通っていたときに『国家』を読み始めた。ご存知の通り、プラトンは一読したところ、読み物としてもたいへんおもしろく、わかりやすいように思えるところがあるので、私は物語を読むように読み始めた。何やかやがあって、『国家』を読み終えたのはずいぶんたってからだったが、それから『弁明』『クリトン』『パイドン』『饗宴』『ゴルギアス』『ラケス』等次々と読み始め、特に『弁明』にはたいへん感銘を受けた。高校の頃、倫理の時間に読むように言われ、読んだはずなのだが、ほとんどおぼえていなかった。しかしその美しく、厳しい生き様は、思い返すたびに辛く思えて、『饗宴』のソクラテスの平和な雰囲気に安心したりするのだった。
 当初、今回編集したいくつかの曲名には、これらプラトンの対話編に登場する人物の名前をつけていた。例えば、6は「グラウコン」、7は「ケパロス」といった具合である。その後いろいろと新しい仕事が始まって、やがてなぜ肉を食べないかといったことが興味の中心になり(ソクラテス、プラトンも菜食主義者の一人に数えられているが)、いつしかプラトンとは離れてしまった。そこでもう一度曲名を考えるに、もっとわかりやすい方がいいような気がしてこうなったわけである。それは、ソクラテスの生き様を見続けることなく、新しい仕事と新しいテーマへと入っていく、わかりにくい孤高のしぐさからわかりやすいものへと移っていく態度のような気もして、たった数ヶ月の間にもいろいろあるなあと思うわけである。

Atsushi Kadowaki 2001.4.15 

 

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