
ただいつもの静かな生活の
ただいつもの静かな生活のひとつひとつを
ゆっくりと
しっかりと積み重ねていった
その重く厚い何層もの生活の厚みが
私たちの背中を
そっとあと押しする
晴れの日も雨の日も
何もかわらない穏やかな時の流れを
じっとしみ込ませた何層もの生きた証しが
しっかりと根をはって
私たちの両手を
そっと引いてくれる
耳を傾けよう
生活の中の小さな声に
不思議とも思わなかった
一日の始まりに
その一日を生きていく
生きているものすべての息づかいに
Atsushi Kadowaki 1997
※1997年度「全労連第七回文学賞」詩部門佳作を受賞。
詩人・秋村宏氏の選評
「佳作『ただいつもの静かな生活の』は、作者のもの静かな語り口が魅力的です。人が生きていく、営々としてくらしていく、ということの意味をとりだし、じぶんに語りかけているのですが、それが他人にもとどくものになっています。「その重く厚い何層もの生活の厚みが/私たちの背中に/そっとあと押しする」や二連めの「何層もの生きた証しが」、「私たちの両手を/そっと引いてくれる」など心にひびくことばです。」(「全労連第7回文学賞入賞作品集」全国労働組合総連合、1998、p82)