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制作日記 (2001年6月)

 

6月4日(月)晴れ

「桂 島」 Atsushi Kadowaki 2001

 今日はとてもいい天気だったので久しぶりに浦戸へ行くことにする。
 塩釜マリンゲート1時発の市営汽船で桂島へ。まだシーズン前なので海岸にはだれもいない。やがて海水浴客たちが座るであろう海の家のテーブルや椅子が、無言で並んでいる。
 海岸に座ってスケッチを始めたが、腰かけた木陰にはあおむしくんたちが糸をのばして吊り下がってきたり、ひとの荷物にもぐりこんだり、ズボンにのぼってきたり、けっこうたいへんである。結局、最終の船の出る5時までにスケッチを3枚と36枚撮りのフィルム1本分の写真を撮った。あっという間の4時間半だった。

        

「桂島のスケッチ」  水彩、紙  F8号

 

6月5日(火)晴れ

「磐司岩」 Atsushi Kadowaki 2001

 作並へ。磐司岩を見ながらニッカウイスキー方向へ歩いて行く。途中、小さな橋で足を止め、たもとの木を描く。橋からのぞくと、日の光に流れが澄んでいる。

「木のスケッチ」  水彩、紙  F8号

 前から描こうと思っていた街道沿いの、昔の納屋を描いていると農家のおばさんが声をかけてきた。いつもそうだが、平日のこんな時間に絵を描いているからか学生と間違えられる。ジーパンにつばなし帽子、リュックというラフなかっこうもそう見せるのかもしれないが、もう社会に出て10年。学生というのは少し無理があるように思える。ひととおり質問してから去って行った。曇ってきて、夕日が見られそうにない。6時すぎの電車で帰ることにした。

「納屋のスケッチ」  水彩、紙  F8号

 

6月10日(日)晴れ

 6月に入ってから描いてきたスケッチをもとに、いくつかテンペラ画を制作する。最初、意欲満々で取り組んでいたのだが、どうもうまくいかない。結局まともに仕上がったのは5月末に野蒜に行った折にスケッチしてきた舟の絵(「川面」)だけだ。

 

6月11日(月)晴れ

 先週後半は天気がくずれたが、今日は快晴。近くの田の中でいくつかスケッチをする。

「流れ」  水彩、紙  F8号

 田んぼの中を歩いていくと下の方に川が見えたので描き始める。対岸では何やら工事をしている。ふと見ると向こうの河原では高校生たちが水遊びをしている(昼休みか?)。

「小屋のスケッチ」  水彩、紙  F8号

 上で描いた川を右手に、分け入って来た田を左手に、小屋の絵を描く。この季節は蚊をはじめとする虫くんたちの無用の訪問を受けずにすむのでとても助かる。ほとんど緑だけで描いた。

 

6月14日(木)雨

 昨日届いたえんどう豆を描く。

「えんどう豆」  色鉛筆、紙

 

6月18日(月)晴れ

 先週後半は雨つづきで梅雨という趣きだったが、昨日、今日と快晴。浦戸諸島へ行こうかと思って自転車を走らせていたが、急に気がかわって作並へ行くことにする。急に気がかわったのでいつもと違うコースを走っていると、そこは神社や寺の多いところで、ふとすずしげな石段が目にとまり、電車の発車までの間にスケッチした。

「青葉神社」  水彩、紙  F4号

 作並では先週たもとの木を描いた小さな橋を渡って、まだ踏み込んだことのなかった部落へ。ここで2枚ほど描く(ここでの絵はこちら)。
 ニッカウイスキーの工場を見ながら、車があった一昨年までよく来ていた新川へ。川の近くまで来てあぜんとする。少しばかりのカーブをまっすぐにするための道路・架橋工事が行われていて、自然のままの河原がコンクリートで固められていたのである。
  絵を描いていると、こうした光景に本当によく出くわす。極端な例では、先週描いた場所が翌週にはなくなっているということもある。諸行無常とか、栄枯盛衰とか言い、かたちのあるものは必ずいつかは滅びると言う。確かにそうなのだが、私の目にするこうした光景は、内に滅びを宿したものが、年とともにそれをあらわにしていく自然の摂理などとは全く異なるもので、暴力的でうむを言わさぬ人為的かつ利己的なものだ。そしてそうした光景を目の当たりにして感じるのはもののあわれなどでは決してなく、ただ単なる脱力感、虚脱感である。

「新川」  水彩、紙  F4号

 川は相変わらず澄んでいた。電車の時刻にはまだ早かったが駅へと向かう。途中、小学生が見知らぬ私に「こんにちは」とあいさつをしてきた。私も反射的に「こんにちは」と返す。こんなところはまだまだ破壊されずに残っているのだ。

 

6月19日(火)雨のちくもり

 先週、絵の写真を送っておいた銀座・小野画廊に電話をする。ずいぶんぼんやりしていた私の道が、かなりの輪郭をともなってきたようだ。とりあえずは近いうちに銀座あたりへ出て行こうと思う。公募展もこれまで避けてきたが、出していくようにしよう。

 

6月23日(土)くもり

 先週連絡をした小野画廊から具体的な案内が届いた。銀座で個展。ぜひとも実現させたいものだ。何としてでも実現させねば。

 

6月26日(火)くもりのち晴れ

 今日は午後から天気がよくなってきて、夕日が美しかった。梅雨の時期は何かと敬遠されがちだが、私は梅雨もいいものだと思う。もちろん、晴れた日も好きだし、夏も冬も春も秋も、雪の日も風の日も台風の日も、何でも好きなのだが。
 午後から近くまでスケッチをしに行った。皮肉なもので、宅地造成のために気軽に近づけるようになった渓流を見つけておいたのだ。すぐそばが更地の新しい団地なので、そのうちこの自然も「危険」だからと埋められるか何かしてしまうかもしれない。

      

「川のスケッチ」  水彩、紙

 川の絵というのは、以前は本当に下手で、とても見られたものではなかったが、最近は少し腕が上がってきたようで、描いていても楽しい。

今月の反省

 今月は梅雨というのに午後から晴れてきてとてもいい天気、という日が多かった。そうした日にも欠かさずスケッチをしに行くべきであるのに、音楽作りやこのホームページ作りでなかなかそうしない日が多かった。これはいけない。銀座進出も具体化してきたわけであるから、これまで眠らせておいた分をしっかり取り戻していかねば。

 

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